スカイ・クロラ

やっと見る気分/機会ができたと思ったら公開終了間近だった。あぶねぇあぶねぇ。
やっぱり公開期間短めなのね・・・


押井作品ということで具体的な方向性は定めないように、期待だけはして見てみた訳だけど、いい意味で期待を裏切られて面白い映画だった。期待の具体的な方向を定めなかったとはいっても、過去の押井作品を踏まえて哀愁というか喪失感というかそういう方向に振るんだろうか、っていう勝手な無意識の期待が多少あったので。
正直、もっと感情的な起伏のある作品を期待してた部分があって、これまでの押井作品の中には静かな中に重い感情を持ってるようなことがよくあったのに、今回は主人公優一は常に平静、草薙さんは常に起伏があるけれど優一のフィルターやカメラの在り方なんかで、画面全体へは広がらないというのにやや驚きを覚えた。ややもすると退屈で寝る人はここで寝るんだろうなぁ、という感じだけど、自分的にはその背景に見え隠れするものに惹き付けられた部分だった。
物語的にも、はいここ盛り上げておいたよお客さん!ってな部分はほとんどなく、一番盛り上がったのは草薙さんの行方不明から大侵攻作戦辺りの流れだけで、最後の最後はむしろ淡々と過ぎていくというのが意外だった。それゆえに、物語の背景にある狂気めいたものが、善悪の判断とかはどっかへすっ飛んで、状況に関係なくただ生きることの辛さや意味みたいなものにのみスポットが当たっていく感じがあったのは、おそらく狙い通りなんだと思う。


とりあえず、見終わって思ったのは、「生きていこう」と。自分の特に楽しくもない日常が肯定されたように思えて、清々しい気分になった。ともすると悲劇的なラストにも見えるんだけど、おそらくこの作品から受け取った感情はこれでいいんじゃないかと思う。終盤も近づいて、ああそういうことなのかな?と思ったところに、最後の優一のモノローグで駄目押しに自分的に確定された。悲しみを反芻するような作品ではないのな。
そういう意味では、映像的なものやドラマ的な部分はともかく、物語全体としてはあんまり繰り返し見る映画でもないのかなぁ。一度見て、この感情を味わったらその使命は果たされるような作品に思えた。まぁ、自分の作品の楽しみ方ゆえな部分は大きいと思うけど。


より、マテリアルとしての映像について。
多少不安だった、俳優の声優は最初は多少のぎこちなさがあって、草薙さん菊池はちょいとヤバいかな?と思ったけど、あちらもこちらも慣れてくるとかなり良くなる。確かにこれは声優では出せないな、と。対して優一加瀬はぎこちなさこそ無くなっていったものの、印象はあんまり変わらず。特に目立つ部分が少なかったこともあるとは思うけど、特筆すべきものを感じなかった。ただ、確かに雰囲気は声優のものではないよな。
谷原は普通に声優なことに驚く。さすがナレーションとかも多いし、声のマイク乗りが常人離れしてるわw 栗山は普通。でもなぜかキャストテロップの大トリ・・・
以上、押井組ゲスト。
ひし見ゆり子はもういつも通り。外見からしてどうみてもわかるようになってるから違和感無し。竹中直人は台詞も少ないし、外見もどこか背景に溶け込んでてあんまり気付かなかった(^^;
立喰師列伝からの人が意外と多かったのが印象的。ていうか、DVD買ったけどまだ見てないよ;

3DCGは正直あんまり有り難みを感じなかった。確かにすごい迫力で格好良いんだけど、どこかスケール感が無くてゲームっぽい。局所的に使ってるなら気にならないんだけど、画面カット全体が3DCGで、その前後に2D手描きを中心としたカットがあるとどうもスケール感に狂いが出て気持ち悪く思える。あとカメラワークもそうで、手描きカットだとどうしてもカメラの動き方って限界があってそれゆえの統一感があるのだけど、3DCGになるとなんでもありになって、きっちり手ぶれやカメラマンの感情の揺らぎが入ってるような部分と、機械的にカメラが動いてる部分での差に違和感を覚える。最初に強く感じたのが墜落した散香を写すシーンで、カメラ位置が上がっていってちょっとした丘の上に墜落してる散香を撮影してるんだけど、カメラの上昇の異常な滑らかさや視点が上がることによって見えてくるその向この妙なきれいさ・スケールが小ささによる箱庭感なんかが、ああ、CGだなぁと思わされてしまった。もったいない。