けいおん!! 番外編「訪問!」

「企画会議!」も見たけどずいぶん前になってしまったのと、こちらが感動的すぎて触れない方向で。いや十分面白かったんだけど、番外編というより通常営業に組み込まれていても何ら問題無い内容だったので。


今回で、今更、さわちゃんが視聴者の視点の一つであることに気付いた。第2期の梓の視点の視聴者の寄り添い方で目に入ってこなかったけど、第1期でたびたび出てきた軽音部のメンバーを半ば愛玩動物みたいに扱う視線は、ある種の視聴者のものと重なる(憂の視線もそういう部分はあるんだけど、むしろその特殊さが端から冷静に観察されるようになっていったので・・・)。それが梓の台頭で一旦鳴りを潜めた後、この作品なりのリアリティの積み重ねを経て、単純に可愛がるのでない慈愛のようなものが視線へと変化し、それが非常に自分の胸に迫るものがあった。
そして、再登場のさわちゃんの同級生とさわちゃんが、卒業する4人の未来像と以前に引き続き重なり、更に今回は新たに梓達下級生組が4人の過去に重なる。それぞれの重なり方・重ならなさ具合による芯と広がりの兼ね合いがこれまた感動的なんだよなぁ。この流れの前に4人の未来への視線というものを描いておく周到さに感じ入る。
いやぁ、番外編とはいうものの、放送スケジュール的にはもちろん、内容的にもこれは最終回だった。上からと下から、過去の経験に重ね合わせて懐かしむのとその中に入り込んで誰とも楽しく過ごす視聴者の視点が両立し、年代を繋いでの広がりというこの作品で描かれた関係性の一つの集大成だった。横の繋がりを描き、その横に繋がった集合の作品世界から・梓の視線からの分離という形で作品の終了を示唆した元祖最終回と対になる内容だったのだなぁ。
正直、元祖最終回よりも涙腺にきた。まぁこれは時間経過と関係性の積み重ねという自分のツボがふんだんに押されまくったのも大きいんだけど、卒業式のような大イベントの無い中でこれだけの重みのある内容がずっしりと来たギャップというのもある。それだから番外編なんだろうなぁ、と納得する内容だった。これが通常シリーズに時系列順に組み込まれていたら、もちろん別れの予感を順次描いていった流れとも浮くし、最終回前に最終回並みの重みを持ち過ぎて最終回を食ってしまいかねない。そう考えると「企画会議!」も番外編として卒業式の内容を知った後に見るべきカラッとして俯瞰気味の上記の流れからやや浮く内容だし、その一方で軽めで、重みのある今回を見るにあたって最終回から一呼吸置くためのクッションとしても置かれていたように思える。本当にけいおんは第2期に入って感心しきりだった。劇場でもこういう構成の妙や積み重ねの生かし方があるなら期待したい。