機動戦士ZガンダムIII-星の鼓動は愛-

(もちろんネタバレなんてあるにきまってるじゃないか。無いと思って読むやつの頭の出来はどうなってんだか)


少し唐突さが過ぎるという印象か・・・


細かい部分は除いて。
終盤、TV版とほとんど同じように人が死に、ストーリーが展開していく時点で、TV版を見た時に形成された感情の回路に陥ってしまった(劇伴による感情回路もある)。それを防ぐためにも、印象を変えるような新カットが終盤に欲しかった。いっそのこと死なないとか(ラストの展開自体変わっちゃうから無理だけど)。
そんなTVにかなり近い気持ちで見ることになったために、ラストは唐突過ぎた。急カーブされた気分。
あのラストはラストで感動的なのだが、あくまでTV版のままの気分でしか見られなかった自分の感情の流れとは別の感動なんだよね。


これは自分の中にTV版ラストの印象が強いから、っていう理由もあるだろうけど、一方でTV版を全く知らない人がどれだけ楽しめるか、という問題もあるから特殊な問題とは言えないだろう。


加えて、物語の落としどころとして、落ちてるのか?って印象もある。TVでは全ての悲劇の象徴としてのカミーユっていうものがあって、その悲劇が頂点に達することで物語に落ちがついた印象があった。ZZも要らないくらいに。対して、今回のラストでは、ネオジオンの次なる動きが明確に示されて、むしろその後を受けてZZをやらなくては納まりが悪いと思ってしまうのは自分だけ?


細かい話。
ジ・Oに突っ込んだ後にズルズル出てくるウェイブライダーだけど、シールドが外れてて本来内部に収まってるZの顔が見えてる。これは機構としては正しいし、メカファンとしては面白いんだけど、それ故にそこにばかり注意が向いてしまってドラマから気がそれてしまった。その後のフライングアーマーをパージしてMSになるカットも作画は素晴らしいんだけど、それ故に同様。いっそのことあそこの流れは、突っ込んだ後は本人達の無事を見せず、その後のサエグサの一人芝居から本格的に見せていった方が良かったんじゃないか?
正直、直前まで不幸の連続で、あそこだけあれほどケロリと無事だとちょっと苛立つかも・・・。今から考えるとTVのあのラストは、メインキャラがあれだけ次々と(実質上)死んでいく状況で当然主人公にだけ累が及ばないはずがあるまい、という無言の期待と納得に支えられていた部分があったろうし、やはりその期待には一瞬でも応えなきゃいけないんじゃないか。


対して女性の描き方はかなり面白かった。エマとヘンケンの親密さとかもそうだし、レコアは立場の変化と心情の変化がわかりやすく、納得しやすかった。TVみたいにベターっと描き続けるんじゃなくて、映画という短時間故に、飛び石のように要所要所を想像力の飛躍で理解させるような描き方なのが功を奏してるのかな。

ただ、そういう飛び石が映画全体でやり切れてなくて、想像のゆとりを提示できないまま漫然と戦いっぱなしな印象なのが残念だった。


些末な話。
想像以上に新作カットが少なかった印象。「旧カットをトレスしなおした」カットは、新カットの流麗さや躍動感、旧カットの情念の双方に欠け、無味乾燥になった感じ。
あとカミーユハマーンとの間で錯綜したイメージの中のフォウがキリマンジェロバージョンだとか、幽霊さん達の中にロザミィがいるとか、これが変えたいけどデジタルじゃ出来ない光の演出で変えられなかったとこなのかな?





面白くなかったか?って聞かれればNOだし、大満足か?って聞かれるとNOなんだな、これが。
今思うに、第2部はサラを中心に散漫ながらよくまとまってる部分もあって、第3部よりもまとまっていたかも・・・?
とりあえず、もう一回見るよ。もう一回見たら評価が反転する可能性があるのが富野だ。


他、色々
池脇じゃなくなったのは聞いてたけど、やっぱり残念だった。演技こそちょっと微妙だったけど、かなりハマってたと思うんだけどなぁ。やっぱり、一作限りの特別出演だったのか・・・
ハマーンの底の浅い尊大さが非常に良かった。TV版の小娘が無理して突っ張ってる感じも良かったが、今回は自分の尊大さに酔ってる感じだろうか?所々の底の浅さが見え隠れするのがハマーンらしく、また良い。